ヘルパーを続けていてよかった瞬間
私がもう5年以上訪問している利用者さんがいます。
最近は体力も落ち、寝たきりで過ごすことが当たり前になりました。
その状態も長く続いていますが、ここ最近は飲み込みが難しい日も増えてきました。
ケアプランの中には口腔ケアが含まれています。
しかし、そこには一つの課題がありました。
それは、口を開けることが難しくなってきたこと。
そして、うがいのために水を含んでも、ごっくんと飲み込むことも、ペッと吐き出すこともできなくなってきたのです。
声掛けや身振り手振りでお伝えしても、なかなか応じることができません。
そうなると、ご家族が金属のスプーンを使って口を開ける場面がありました。
もちろん、ご家族も何とか口の中をきれいにしたいという思いからの行動です。
それでも私は、その様子を見るたびに心が痛みました。
そして、無理に口を開けることが続けば、本人の「口を開けたくない」という気持ちを強めてしまうのではないかとも感じていました。
そこで私は、うがいを無理に行わず、スポンジブラシを使った口腔ケアだけにしてみようと考えました。
前回の訪問時、本人にスポンジブラシを見せながら、
「今日はうがいはしないよ」
「スポンジだけだよ」
「口を開けてくれるかな?」
とお伝えしました。
すると、ゆっくりとうなずいてくださいました。
ご家族も半信半疑な様子でしたが、私はスポンジブラシを近づけながら、
「お口をきれいにしますね」
「開けてもらってもいいですか?」
と再度、声を掛けました。
すると、本当に口を開けてくださったのです。
無事に口腔ケアを行うことができたこと。
その瞬間の嬉しさといったら、言葉になりません。
もしかすると、その日たまたまだったのかもしれません。
それでも私は、とても幸せな気持ちになりました。
介護の仕事をしていると、どうしても「できなくなったこと」に目が向いてしまうことがあります。
ですが、その方が何を不安に感じ、何を嫌だと感じているのかを考えながら関わることで、思いが通じ合う瞬間があります。
今回の出来事は、利用者さんが口を開けたくなかったのではなく、
「うがいがつらかった」「何をされるのかわからず不安だった」だけなのかもしれない、と考えるきっかけにもなりました。
言葉で気持ちを伝えることが難しくなっても、その人の思いや意思がなくなるわけではありません。
私たちが少し立ち止まり、その人の立場になって考えてみることで見えてくるものがあります。
利用者さんが口を開けてくださったあの瞬間は、口腔ケアができたこと以上に、「気持ちが伝わった」と感じられた出来事でした。
そんな瞬間に出会えるたび、この仕事を続けていてよかったと思います。
これだから訪問介護の仕事は辞められない。笑
